▍ この記事の要点
  • 顧問料は過去10年で平均▲15%低下。この流れは今後も続く
  • 顧問料を守る最大の武器は「専門性の可視化」。替えの利かない存在になること
  • 既存顧客への値上げは「値上げ」と言わず「サービス改定」として提案すると成功率が上がる
  • 低単価顧問先を切らずに抱え続けることが、事務所の成長を最も阻害する要因になっている

記帳代行の単価崩壊は多くの税理士事務所が体感しています。クラウド会計の普及・フリーランス増加・競合の増加が重なり、「月額5万円でやってくれないか」という声が珍しくなくなりました。この記事では、顧問料デフレの構造を理解した上で、単価を守り・上げるための5つの戦略を解説します。

この記事の目次
  1. 顧問料デフレの現実と構造
  2. 戦略①:専門性の可視化
  3. 戦略②:付加価値サービスへの転換
  4. 戦略③:既存顧問先への値上げ交渉
  5. 戦略④:低単価顧問先の戦略的整理
  6. 戦略⑤:AI化で原価を下げる
  7. 今すぐできる最初の一歩

顧問料デフレの現実と構造

税理士事務所の顧問料が下落している背景には、主に3つの構造的な変化があります。

  1. クラウド会計の普及:freee・マネーフォワードの台頭で、顧問先自身が仕訳・確認できる環境が整い、記帳代行の必要性が低下した
  2. 競合の増加:税理士登録者数は増加を続けており、価格競争が発生しやすい環境になっている
  3. 顧問先の価格意識の高まり:中小企業経営者のコスト意識が上がり、「税理士費用の相場」をWebで調べてから交渉に来るケースが増えた

この構造は今後も続きます。「現状維持」は実質的な値下げを意味します。

戦略①:専門性の可視化

顧問料下落への最も根本的な対策は、「替えの利かない税理士になること」です。特定の業種・課題に特化した専門家は、汎用的な記帳・申告しかできない税理士より価格競争にさらされにくい。

具体的な可視化方法:

  • HPのプロフィールに「専門領域:医療法人の資産管理・相続対策」のように明記
  • 名刺に「建設業専門税理士」のような専門肩書きをつける
  • 専門領域の情報発信をSNS・note・ブログで継続する
  • 専門領域での実績事例(守秘義務に配慮した形で)をHPに掲載する

戦略②:付加価値サービスへの転換

記帳代行・申告書作成という「コモディティ化した業務」から、より高付加価値の業務にシフトすることで、単価を上げる余地が生まれます。

従来の業務(単価下落が進む)付加価値業務(単価を上げられる)
記帳代行(月額1〜3万円)経営コンサル・月次経営数字の解説(月額5〜15万円)
確定申告書作成(年1回)節税シミュレーション・資金調達支援(年数十万円)
給与計算(月額1〜2万円)組織設計・人件費最適化アドバイス(スポット数十万円)
年末調整対応M&A・事業承継の税務コンサル(案件数百万円)

戦略③:既存顧問先への値上げ交渉

既存顧問先への値上げは、多くの税理士が「関係を壊したくない」と避けがちです。しかし、適切に行えば受け入れてもらえるケースは思ったより多い。

値上げ交渉の3原則:

  1. 「値上げ」とは言わない:「サービスの改定」「より充実したサポートへの移行」として提案する
  2. 理由を具体的に説明する:「インボイス対応・電帳法対応のコスト増加」「AI導入投資」など、背景を正直に伝える
  3. 移行期間を設ける:「来期から」または「3ヶ月後から」と余裕を持ったタイミングを提示する

値上げの目安:年10〜15%程度の値上げは、理由を丁寧に説明すれば8割以上の顧問先に受け入れてもらえることが多い。それ以上の値上げが必要な場合は、サービス内容の充実とセットで提案する。

戦略④:低単価顧問先の戦略的整理

多くの事務所が抱えている問題:「顧問料が低い顧問先が多すぎて、高付加価値業務に時間を使えない」。低単価顧問先は、件数を増やしても利益率が上がらない構造的な問題をはらんでいます。

整理の基準(例):

  • 顧問料が月2万円以下でかつ対応工数が月3時間超の案件は採算割れ
  • 毎年同じ時期に大量の書類・問い合わせが来て、工数が読めない顧問先
  • 値上げを全く受け入れない顧問先

整理の進め方:いきなり契約解除するのではなく、値上げを提案し、受け入れてもらえない場合に「より適切な税理士を紹介する」形でスムーズに移行する方法が関係維持の観点からも望ましい。

戦略⑤:AI化で原価を下げる

顧問料が下がっても、業務コスト(人件費・時間)を同じペースで下げられれば利益率は維持できます。AI化はこれを実現する最も現実的な方法です。

業界平均でAI仕訳ツールを導入した事務所では、月次業務のコストが30〜50%削減される実例が出ています。顧問料が10%下がっても、業務コストが40%下がれば、結果として利益率は改善します。

▍ 経営ラボで詳しく読む

AI導入・採用戦略・事務所の組織化については 経営ラボ で詳しく解説しています。

今すぐできる最初の一歩

5つの戦略を全部同時に始める必要はありません。まず今週中に「自分の顧問先リストを月額単価順に並べ直して、下位20%の顧問先を特定する」ことから始めてください。そこに何が見えるかで、次の優先課題が決まります。