- 記帳代行の単価は10年で約50%下落。価格競争では持続不可能
- 顧問単価を上げる本質は「作業の代行」から「経営の参謀」へのポジション変更
- 業界先行事務所は単価を3-5倍に上げ、職員1人あたり粗利を倍化
- 本記事では値上げ交渉の具体的トークと、提案書の構造を完全公開
税理士業界は、長らく「値上げできない業界」と言われてきました。クラウド会計の普及で記帳業務の単価は10年で半減し、いまも下落圧力が続いています。一方、業界の先行事務所では顧問単価を月3万円から15万円に引き上げ、それでも顧問先継続率を維持している例が増えています。本記事では、業界横断の取材から、その方法論を整理します。
業界の単価下落構造
| サービス | 2015年 | 2026年 | 下落率 |
|---|---|---|---|
| 月次顧問料(中小企業) | 5万円 | 2.5万円 | −50% |
| 記帳代行(年商1億円規模) | 10万円/月 | 4万円/月 | −60% |
| 申告書作成(個人事業主) | 15万円 | 8万円 | −47% |
| 節税相談スポット | 10万円 | 15万円 | +50% |
| 事業承継コンサル | — | 50-200万円 | 新規領域 |
下落しているのは「定型業務」。逆に、「経営判断に資するアドバイザリー」は単価が上昇しています。値上げ戦略の核心は、後者へのポジション変更です。
値上げ成功の3条件
- 提供価値の明確化:何を解決するのか、を顧問先目線で言語化
- 顧問先のセグメント:値上げに耐える顧問先と、継続が困難な顧問先の判別
- 段階的な値上げ:一度に倍ではなく、3年で段階的に引き上げ
顧問先のセグメント整理
顧問先を3段階で評価し、それぞれの戦略を分けます:
| セグメント | 特徴 | 戦略 |
|---|---|---|
| A:成長企業(10-20%) | 売上拡大、経営課題が複雑化 | 大幅な値上げ+アドバイザリー強化 |
| B:安定企業(50-60%) | 業績は横ばい、関係は安定 | 段階的値上げ+付加価値提案 |
| C:低単価・低成長企業(20-30%) | 値上げが困難、業績も縮小 | 顧問解消の検討(替えの効く事務所へ) |
Cセグメントを意図的に手放す勇気が、事務所全体の単価を上げる第一歩です。
提供価値の再設計
月15万円の顧問料を支払う顧問先が求めるサービス:
- 月次MTGでの経営アドバイザリー(PL分析、資金繰り、人事、税務戦略)
- 業界比較データの提供(同業他社のベンチマーク)
- 節税・税務戦略の能動的提案(年4回以上)
- 銀行・投資家との折衝サポート
- 事業承継・M&Aの早期相談対応
これらを「定型サービス」ではなく「アドバイザリーサービス」として提供することで、月15万円の単価が成立します。
提案書の構造(テンプレ公開)
値上げ提案書は5枚構成が標準:
- 表紙:「貴社の経営課題と、私たちの新サービス提案」
- 業界の構造変化:競合動向、税制改正、AI/DX影響
- 貴社の課題分析:直近3年のPL/BS分析、改善ポイント
- 新サービスの提供価値:月次MTG、業界比較、戦略提案
- 料金プラン:従来料金との比較、ROI試算
値上げトークの実例
シナリオ:年商3億円の中小企業(現在月3万円)への値上げ
「社長、いつもありがとうございます。今日は、来年度から提供させていただきたいサービス内容の変更について、ご相談です。
ここ3年の貴社の成長を見て、現状の月次顧問対応では、本当に必要な経営支援をお届けできていないと感じています。
具体的には、(a) 月次の経営MTGで戦略相談、(b) 業界比較データでベンチマーク分析、(c) 半期ごとの税務戦略の能動提案 ─ これらを新たにお届けしたいと考えています。
それに伴い、月額顧問料を15万円に変更させていただきたい。これは、貴社の利益改善に年300万円以上のインパクトをもたらす提案です。」
このトークのポイント:(1) 値上げ理由を顧問先のメリットで語る、(2) ROIを数字で示す、(3) 単価アップだけでなくサービスもアップグレードする。
離脱した顧問先への対処
値上げ提案で5-15%は離脱します。これは戦略上、織り込み済みとすべき:
- 低単価顧問先の離脱は、職員の余力を生み、A/Bセグメントへの集中時間を作る
- 離脱した顧問先には、低単価で受ける後輩税理士を紹介(業界のWIN-WIN)
- 離脱率を15%以内に抑えるための事前関係性構築は必須
事務所の単価戦略を、
業界横断のデータで実装する。
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