▍ この記事の要点
- 業界の譲渡相場はEBITDA × 3-5倍。ただし規模・継続性で大きく変動
- 1人事務所は2-3倍、20名超は5-7倍と、規模で2倍以上の差
- 顧問先継続率が80%超か未満かで譲渡対価が30-50%変わる
- 「最初の提示額」と「最終成約額」の中央値の差は+25%。交渉の余地は大きい
税理士事務所のM&A・譲渡件数は、2025年に推定3,000件を超え、過去最高を更新しました。一方、譲渡対価の決定基準は依然として不透明で、「相場が分からない」という所長税理士が圧倒的多数です。本記事では、業界横断の取材から見えた、規模別・業種別の実勢価格と、譲渡対価を最大化する交渉戦略を整理します。
この記事の目次
業界の譲渡市場:規模と動向
| 年 | 譲渡件数(推定) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2020 | 900件 | +12% |
| 2022 | 1,650件 | +22% |
| 2024 | 2,485件 | +22% |
| 2025 | 2,820件 | +13% |
| 2026(予測) | 3,200件 | +13% |
後継者不在の所長層が引退期に入り、譲渡件数は今後も増加見込み。一方、買い手側(税理士法人・事業会社)も限定的なため、「売り手過多」の状態が続きます。
EBITDA倍率の規模別実勢
| 事務所規模 | 売上目安 | EBITDA倍率 | 譲渡対価レンジ |
|---|---|---|---|
| 1人事務所 | 1,500-3,000万 | 2-3倍 | 500-1,500万円 |
| 2-4名 | 3,000-7,000万 | 3-4倍 | 1,000-3,500万円 |
| 5-9名 | 7,000万-1.5億 | 3.5-4.5倍 | 2,500-7,500万円 |
| 10-19名 | 1.5-3億 | 4-5倍 | 6,000万-1.5億円 |
| 20名超 | 3億超 | 5-7倍 | 1.5億超 |
規模が大きくなるほど倍率が上がるのは、属人性の低下と組織の継続性が評価されるため。1人事務所は所長依存度が高く、譲渡後の顧問離脱リスクが大きいため低倍率になります。
譲渡対価を上下させる7要因
増額要因
- 顧問先継続率(直近3年):95%超なら+20-30%
- 業種特化:医療・不動産・IT等の高単価業種比率が高い
- 職員の継続意向:番頭格・主要職員が継続する
- DX/AI導入度:効率化済みなら+15-25%
減額要因
- 売上集中度:上位3顧問先で売上50%超なら−15-25%
- 所長依存度:所長が直接担当する顧問先が80%超なら−20-30%
- 低単価顧問の比率:月3万円以下の顧問が30%超なら−10-20%
業種別のプレミアム
| 顧問業種 | プレミアム | 備考 |
|---|---|---|
| 医療法人 | +30% | 高単価+安定継続 |
| 不動産業 | +20% | 高単価+税務複雑 |
| IT・SaaS | +25% | 成長性+将来IPO期待 |
| 製造業 | +10% | 安定継続 |
| 建設業 | ±0 | 標準 |
| 飲食・小売 | −15% | 低単価+廃業リスク |
譲渡対価の支払い構造
業界標準の支払い構造:
- 初回支払い:30-50%(譲渡時点)
- 分割支払い:50-70%(2-5年で分割)
- アーンアウト:0-20%(顧問継続率連動)
分割支払い・アーンアウトを組み合わせることで、買い手の資金負担を軽減+売り手の継続的サポートインセンティブが両立できます。
交渉で対価を最大化する5つのポイント
- 複数の買い手候補を並走:1社のみだと足元を見られる。3-5社の競争入札
- 事前準備3-6ヶ月:業務マニュアル整備、顧問先継続率向上、DX対応の事前実施
- 譲渡対価の根拠を明確化:EBITDA × 倍率の計算根拠を売り手から提示
- 仲介に頼り切らない:仲介の利害と売り手の利害は完全には一致しない
- 分割期間を長めに交渉:分割期間が長いほど買い手側の負担減で、合計対価UP余地
仲介手数料の相場と注意点
| 譲渡対価 | 仲介手数料率 | 支払い方 |
|---|---|---|
| 5,000万円以下 | 10-15% | レーマン方式が多い |
| 5,000万-1億円 | 5-10% | 同上 |
| 1億超 | 3-7% | 同上 |
注意点:仲介の手数料は「譲渡対価ベース」で計算されるため、仲介は対価を上げるインセンティブが働きます。一方、「成約させる」インセンティブも強いため、相場より低い対価でも成約させようとするケースもあります。
対策:複数の仲介を並走し、それぞれから提示される対価を比較。中立メディアの相談窓口(このサイトのような)でも一次情報を確認。
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