▍ この記事の要点
  • 税理士事務所のM&A仲介を巡るトラブルは、過去5年で3.5倍に増加
  • 「選んではいけない仲介」の典型的な3兆候を整理
  • 仲介選定で「成約優先 vs 顧客優先」の見分け方
  • 本当に必要なのは仲介ではなく、「中立的な意思決定支援者」

税理士事務所のM&A・譲渡件数は年間3,000件超に到達し、それに比例して仲介事業者も急増しました。一方、業界では「仲介に振り回された」「希望と違う相手に譲渡された」「手数料が想定の倍だった」というトラブル事例も急増。本記事では、業界横断の取材から、選んではいけない仲介の3つの兆候を整理します。

この記事の目次
  1. 業界のM&A仲介トラブル:実態調査
  2. 兆候1|「成約させたい」が透けて見える
  3. 兆候2|手数料体系が不透明
  4. 兆候3|売り手と買い手の両方を担当する
  5. 信頼できる仲介の見抜き方
  6. 仲介を使わない選択肢
  7. 仲介を使う場合の交渉戦略

業界のM&A仲介トラブル:実態調査

トラブル類型2020年2025年増加率
手数料の認識違い120件520件+333%
譲渡対価の不満180件680件+278%
譲渡後の顧問離脱が想定超90件340件+278%
買い手の文化不適合60件240件+300%

件数の増加は、譲渡件数の増加に比例しているものの、「業界の知見が追いついていない」ことが背景にあります。

兆候1|「成約させたい」が透けて見える

仲介の収益源は「成約報酬」のため、「とにかく成約させたい」動機が強くなります。これが行きすぎると、売り手の希望条件を犠牲にしてでも成約を急ぐ仲介が現れます。

具体的なサイン:

  • 「この条件で成約しないと、もう買い手は出ません」と急かす
  • 初期段階から特定の買い手を強く推す
  • 譲渡対価の交渉余地を「もうこれが限界」と一方的に切る
  • 売り手側の悩み・希望を聞かず、買い手側の事情を優先して話す

これらが見えたら、仲介変更を検討すべきです。

兆候2|手数料体系が不透明

業界相場は前述の通り、レーマン方式(譲渡対価の3-15%)が標準。一方、トラブルになる仲介は:

  • 初期相談で手数料の総額を明示しない
  • 「成約後にお話しします」と濁す
  • 追加コスト(DD費用、アドバイザリー料等)を後出しする
  • 最低手数料を高額に設定(500-1,000万円〜)

初期相談で手数料の総額レンジを明示しない仲介は、信頼性が低いと判断すべき。

兆候3|売り手と買い手の両方を担当する

多くのM&A仲介は、「両手取り」と呼ばれる構造で、売り手と買い手の両方から手数料を取ります。これ自体は違法ではありませんが、利益相反の構造が内包されています:

  • 売り手は対価を最大化したい
  • 買い手は対価を最小化したい
  • 仲介は両方から手数料を取りたい→「ほどほどの対価で成約させたい」

結果、売り手にとって最善の対価で成約しないケースが頻発します。理想は、売り手専属(FA = ファイナンシャルアドバイザー)型の仲介を使うこと。

信頼できる仲介の見抜き方

チェック項目YES
初期相談で手数料総額を明示する必須
売り手・買い手のどちらを担当するか明確必須
過去の成約事例(業界内)を匿名で開示必須
譲渡対価の根拠(EBITDA倍率等)を計算で提示必須
「成約させない」選択肢も提示推奨
業界(税理士業界)の知見が深い推奨
譲渡後のサポート(顧問引継等)まで対応推奨

仲介を使わない選択肢

仲介を介さない譲渡も増えています:

  • 業界団体・税理士会経由:手数料がかからないが、買い手が限定
  • 知人ネットワーク経由:信頼性は高いが、適切な相手探しは困難
  • 業界マッチングプラットフォーム:オンライン型、手数料は低め
  • 独立メディア経由の相談:中立的な情報提供のみ、対価は別途

事務所規模や状況によって、最適なルートは変わります。複数のルートを並走するのが実勢です。

仲介を使う場合の交渉戦略

  1. 3-5社の仲介と並行で初期相談:それぞれの提示条件を比較
  2. 専属契約は避ける:複数仲介の競争で対価UP
  3. 成功報酬の最低額を交渉:「最低500万円〜」のような設定を下げる
  4. 譲渡対価の根拠を文書で取得:算定方法を明文化
  5. 譲渡先候補を3-5社見たいと要求:1社決め打ちを避ける
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